2008年6月24日火曜日

日本酒: 長期熟成酒研究会第28回勉強会・懇親会


長期熟成酒研究会第28回勉強会・懇親会に行ってきました。
長期熟成酒というのは、おおよそ作ってから3年以上寝かせたお酒を言います。近年一般に日本酒は新酒のイメージが強いですが、それこそワインと同じで、実はそうとうの長期熟成に耐え、しかも独特の風味を増していくアルコールなのです。この研究会は昨年20周年だったそうですが、現在出荷されている熟成酒には、30年物もあるんですよー。

さて、今回の勉強会では、まず1時間ほど福光屋で熟成酒の研究を続けてこられた梁井宏さんのお話がありました。熟成酒の歴史(実は、鎌倉時代あたりから文献に登場する)と評価(江戸時代には新酒よりも「全身がうるおう」として高く評価されていた)に始まり、明治から昭和にかけて古酒が消えなかなか復活しなかった理由を検討し、最後にこれからの日本酒の可能性を広げるための提言で終わる、中身の濃い、おもしろい話でした。級別制度があったころに一級酒に認定されるためには「水よりも色がうすくなければならなかった」というコメントにびっくり。飲食物の作り手として悲しくなるような処理だと思います…。作り方も飲ませ方も飲み方も、もっといろいろ考えていくべき、という提言はまさにその通りですね。いいお話をありがとうございました。私も、「長期」まではなかなか踏み込めませんが、熟成は本来日本酒に欠かせないものだと思っているので、バランスのとれたおいしいお酒をみんなと飲んでいきたいなあ、と心底感じました。


さて、その後はおたのしみ、懇親会です。約20蔵が50種類ほどのお酒を出品していました。特に目玉は別料金(1000円)でちょこっと(10ccぐらい)ずついただける達磨正宗「聖胎長養 昭和47年」(1972)李白「純米大吟醸 1986年」でした。写真は、その2本を開ける前のひととき。右の写真は、李白ですね。李白の方は、20年以上の熟成酒とは思えないようなゴールデンカラーに複雑な香りの高い、とてもスマートなお酒でした。コケや南国の花の香りに微妙なナッティさかな。味は軽くて、さらっとした印象でした。達磨正宗はその真逆といった感じで、焦げ茶でとろっとしていて、日本酒というより、うーん、マデイラとかラムみたいに見えます。ところが、味わってみると甘くないんですよ、これが。こげたようなナッティな香りがしてどんなフルボディなんだろう、と思いきや、味わいは酸味が勝ったすっきりした後味のあるお酒でした。どちらも料理に合わせるにはもったいない、と思いました。まあ、合う食べ物も少なそうだけど。

大塚屋酒店の京子さんに連れて行ってもらったので、一般のお酒はお互いに味見したりもできました。でも、さすがに濃厚なお酒が多いので、普段の酒の会ほどお酒が進まず。自分で9種類ぐらいいただいて、あとは味見させてもらった程度でした。上記の特別出品酒はのぞいて。よって、最後までよっぱらわずに過ごせました。いいことです。
特に気に入ったお酒としては
 ・達磨正宗 1989ビンテージ および 1999ビンテージ
 ・花垣 年譜 5年純米
 ・龍力 真古酒 1983年醸造
でした。なんか、こういう会でも気に入るお酒がいつものラインナップになりつつあります。実は、達磨正宗は私が初めて飲んだ熟成酒でした。こんな日本酒があるんだ!と驚いて以後私の中で長期熟成酒というと、やっぱりここが基準になります。いつの年代をいただいても、達磨正宗って味なんですよね。どうやって作っているのか、すごくすごく気になっています。花垣は、Fさん持ち込みの究極の花垣がおいしくて、別の会でいただいたオーク樽熟成ものがおいしくて、この年譜もおいしい(これは軽い甘みにナッティな口当たりがいい)と、なんだか同じ蔵のお酒とは思えないバラエティの広さにも驚きです。しかも、いろいろみんなおいしいんだもの。いろいろやっていてどれも「え?」という味の蔵もあるので、花垣ってすごいな、と心底思います。龍力は、個人的には飲むお酒によって好き嫌いが極端に異なる蔵で、基本はいいなあ、すごいなあ、と思うのですが、たまに「えええ!どうしようこれ」が混じってるところが謎。単に私個人の嗜好かもしれないけど。で、真古酒は肉が食べたくなる日本酒で、ナッティでスパイシーですっごくよかったです。

熟成酒はチーズや中華や蒲焼きなどに合うとよく言われます。たしかにその通り。というわけで、会場にも和食に限らずいろんな料理が並んでいました。チーズやチーズ料理、揚げ物、豚の角煮、イタリアン(肉のパスタなど)などなど。熟成酒は個性が強いので、どれに合うかな、などと考えながら料理をいただくのが、また楽しみでした。京子さんと「かにみそやじゅんさいは合わないねー」と合意。火が通っているものの方がいいみたいでした。

京子さんが「熟成酒って、日本酒だけを飲んでいる人よりも、ワインや洋酒を飲んでいる人の方が受け入れやすいのかもね」と言ってましたが、たしかにそうだろうなあ、と思います。自分の書いている評価を見ても、ウィスキーのテイスティングしているときと同じ評価基準で考えているのがよくわかります。他のお酒の会とは一風変わった、テイスティングイベントとしてもとても楽しい会でした。毎回とは行かなくても、また行きたいです!ひとつだけ残念だったのは、提供されるのが常温のみだったこと。熟成酒は実はぬる燗なんかもとってもいいので、今後はぜひ燗も導入してほしい!

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